管楽器としてのEWIの表現力

はるばる福岡よりEWIレッスン受講に来ていただいた方がいらっしゃり、そこでいろいろとお伝えしたことの備忘も含めて書きたいと思います。
アルトサックスを吹いていらっしゃり、EWIをサックスに近づけたいという話がありましたので、そこを重点的にレッスンしました。

EWIは息の強弱、ビブラート、ピッチベンドなど、サックスと遜色ない表現が可能な楽器です。
特にビブラートやピッチベンドは生のサックスと比べてEWIで容易に表現が可能です。しかし、ビブラートやピッチベンドをもってしてもなかなかサックスっぽく吹けないという悩みがありました。

そこでお伝えしたのが、ジャズのアーティキュレーションです(あくまで基礎的なものですが)
宝島を題材にしたので、AメロBメロのキーである「F」とサビのキーである「D」のペンタトニックにちょっと味付けしたスケールで練習をしてみました。


この楽譜の裏、つまり2,4,6,8,・・・番目の音でのみタンギングを行う、というものです。持論ですが、このアーティキュレーションがクラシックとポップス・ジャズを分かつ最大の要素だと考えています。T-SQUAREの楽曲の中でも本田雅人氏はEWIを演奏するうえでタンギングの緩急をうまく使っておられ、電子楽器でありながら生サックスのような表現を可能にしています。(本田雅人氏は上記に加え、オクターブまたぎでうまくタンギングするなど、もっと多くタンギングしてますが)

また、アドリブをどう吹けばいい、という話にもなりましたので、ひとまずはということで上記のスケールを指癖にして裏タンギングをすることを起点にイメージを膨らませてはどうか、ということをお伝えしました。(曲に合わせてスケールは移調の必要あり)

宝島はT-SQUAREの中でもジャズのビバップ要素がかなり強く、「〇7」のところでビバップフレーズをかますとそれだけで「おお」となりますが、時間の関係もあり、理屈のみお伝えし、あとはカラオケをバックにソロの4バースをやりながら感覚を掴んでいただきました。

管楽器のよい演奏の根底の根底は「ピッチとリズム」と考えておりますが、EWIはピッチはズレないので、残る要素であるリズムを正しく吹くことが大事です。上記のアーティキュレーションはタッチセンサーでついつい流れてしまう運指をリズムに乗せる効果もあります。そしてこのアーティキュレーションをもう少し強調することでサックスの「ハーフタンギング」の役割も果たすので、表現力アップへのインパクトはビブラートやピッチベンドよりもはるかに高いテクニックと言えます。